もり酒店について

100年目の原点回帰

もり酒店は、大正初期に美川の地に店を構え、以来約100年にわたり地域の皆さまと共に歩んで参りました。そして令和の時代を迎え、いまここに改めて「町の酒屋」の原点に立ち戻った店づくりを宣言いたします。

酒の心が流れつく場所

町の酒屋の原点とは何か。それは、造り手と飲み手の双方の顔を見ながら、一本一本の酒を大切にお売りするということです。

このシンプルな理念に至るまでに、もり酒店の100年にはさまざまな紆余曲折がありました。一時期は安くお売りすることがもっともお客様に喜ばれることと考え、そのような経営をしていたこともございます。こうしたニーズや業態自体を否定するわけでは決してありません。しかし、地方の小さな酒屋であるもり酒店が、いちばん大切にすべきもの。それは酒を介して人間が分かち合う心そのものであり、私たちの仕事は「酒がうまい」と感じるその瞬間に至るまでの、人が造り、人が売り、人が買うという人間の営みをより良く合流させていくことに他ならないと考えるようになったのです。

酒と人の物語

一本の酒がその味に秘めるものはさまざまです。それはその地の歴史であったり、杜氏のこだわりであったり、地元酒蔵の若き社長が未来の稲作を想って奔走した痕であったり。酒は自ら語りませんが、時に酒屋が語り部となり、こうした物語を飲み手にお伝えすることもあります。逆に、どんな料理に合わせてこの酒が飲まれているか、どんな人が買って行かれたかというお話を酒蔵にお伝えすることもあります。何気ない日々の暮らし――晩酌を楽しみに家路につく、特別な一本をあの人に贈ろうとケースの前であれこれ悩む、そんな人間の横顔をいちばん見てきたのもまた酒屋です。

うまいげん!で明日をひらく

うまいげん、という私の大好きな言葉があります。ただの美味しいではなく、これ美味しいよ、と誰かに伝えるニュアンスを含む石川の言葉です。うまい酒はいろいろとありますが、売り場に心が通うことで、ただの「うまい」は「うまいげん」の言葉に乗って、もっと遠くへ深くへと分かち合われていくのではないかと思います。「うまいげん」で明日をひらく。美川という町が、町の外にも聞こえるほどに「うまいげん!」の響き渡る町になることを目指し、もり酒店は町の元気な酒屋として、愛をもって酒の商いを続ける所存です。